「いつかは手に入れたい」と靴好きが口を揃えて語るのが、イギリスの革靴です。質実剛健で、何十年も履き続けられる堅牢な作り。そして、履き込むほどに自分の足へと馴染んでいく感覚は、一度知ってしまうと他の靴には戻れない魅力があります。
しかし、いざ探してみると「ブランドが多すぎてどれを選べばいいかわからない」「高級ブランドと中価格帯で何が違うの?」と悩んでしまう方も多いはず。
今回は、聖地ノーサンプトンの伝統から、2026年現在のトレンドまでを網羅。あなたの一生モノとなる運命の一足を見つけるために、予算やスタイル別にイギリスの革靴ブランドを徹底解説します。
なぜイギリスの革靴は「一生モノ」と呼ばれるのか
イギリス靴が世界最高峰とされる最大の理由は、その製造工程にあります。特に「グッドイヤーウェルト製法」は、イギリス靴の代名詞とも言える伝統技術です。
この製法は、アッパー(甲革)とソール(底)を直接縫い付けるのではなく、「ウェルト」と呼ばれる細い革の帯を介して接合します。そのため、ソールが摩耗しても何度も交換して履き続けることができるのです。
また、中底に敷き詰められたコルクが、数ヶ月履き込むうちに自分の足裏の形に合わせて沈み込みます。この「自分専用の型」が出来上がる感覚こそが、イギリス靴が愛される理由。10年、20年と手入れをしながら履き続けることで、新品の時よりも格好良く、履き心地の良い靴へと育っていきます。
最高峰の頂点!世界が憧れる究極の老舗ブランド
まずは、いつかは手にしたい「格付け」のトップに君臨するブランドから見ていきましょう。これらはもはや靴の枠を超えた、工芸品としての価値を持っています。
ジョンロブ(John Lobb)
「革靴の王様」と称されるのがJohn Lobbです。現在はエルメスグループの傘下にあり、世界最高峰のタンナー(革なめし業者)から選りすぐった極上のレザーのみを使用しています。
代表モデルの「シティII」は、究極のストレートチップ。無駄を一切省いたミニマルな美しさは、冠婚葬祭から重要なビジネスシーンまで、履く人の格を一段引き上げてくれます。ダブルモンクの傑作「ウィリアム」も、カジュアルさと気品を両立した名作として不動の人気を誇ります。
エドワードグリーン(Edward Green)
「でき得る限りの上質なものを作る」という信念を貫くのがEdward Greenです。大規模な機械化をせず、熟練の職人による手作業の工程を多く残しているのが特徴です。
特筆すべきは、アンティーク仕上げによる深い色ムラ。使い込まれた家具のような温かみと高級感があります。名作ラスト(木型)「202」を使用した「チェルシー」は、日本人の足にも馴染みやすく、端正な英国紳士の足元を演出してくれます。
ジョージ・クレバリー(George Cleverley)
ビスポーク(注文靴)の分野で名を馳せたGeorge Cleverleyは、チゼルトゥと呼ばれる、ノミで削り取ったような鋭角なつま先がアイコンです。エレガントで色気のあるシルエットは、イタリア靴の華やかさとイギリス靴の堅牢さを併せ持ったような独特の雰囲気があります。
本格派の王道。ステータスと信頼の有名ブランド
次に、イギリス靴の「顔」とも言える、知名度・品質ともに間違いのない実力派ブランドを紹介します。
クロケット&ジョーンズ(Crockett & Jones)
世界で最も多くのラスト(木型)を所有していると言われるのがCrockett & Jonesです。数多くの有名ブランドのOEM(受託製造)を請け負ってきた歴史があり、その技術力は折り紙付き。
映画『007』シリーズでジェームズ・ボンドが愛用していることでも有名です。ストレートチップの「オードリー」は、現代的なシルエットでビジネスマンから絶大な支持を得ています。
チャーチ(Church’s)
「英国靴の正統」といえばChurch's。かつては質実剛健な靴の代名詞でしたが、プラダグループに入ってからはファッション性も高まりました。
雨の多いイギリスらしい「ポリッシュドバインダーカーフ」は、革の表面に特殊な樹脂加工を施しており、雨の日でもガシガシ履ける強さを持っています。名作「コンサル」や、外羽根プレーントゥの「シャノン」は、どんなスタイルにも合う万能選手です。
トリッカーズ(Tricker’s)
カントリーブーツの元祖として知られるTricker's。チャールズ国王も愛用するロイヤルワラント(英国王室御用達)のブランドです。
ウィングチップに施された華やかなメダリオン(穴飾り)と、厚みのあるダブルソールが特徴。スーツよりもジャケパンスタイルやデニム、チノパンに合わせるのが得意で、休日の格上げアイテムとして最適です。
高コスパで狙い目。10万円以下で買える実力派
「良い靴なのはわかるけれど、20万円は出せない…」という方でも安心してください。イギリスには、伝統を守りながらも10万円以下で驚くほどのクオリティを提供するブランドが多数存在します。
ジョセフ・チーニー(Joseph Cheaney)
伝統的な製法を守りつつ、常に新しいエッセンスを取り入れるのがJoseph Cheaneyです。自社工場で一貫生産を行うことで、品質に対して非常にリーズナブルな価格設定を実現しています。
最近では、ミリタリーラストを採用した武骨なモデルが人気。少しカジュアルなビジネススタイルが増えた現代のニーズにぴったりのラインナップが揃っています。
サンダース(Sanders)
イギリス国防省(MOD)への供給実績を持つSanders。実用性を重視したタフな作りが魅力です。
特に有名なのが「マッドガード」仕様のチャッカブーツ。ソールの側面をラバーで覆うことで泥除けの効果があり、雨の日でも安心して履けます。スティーブ・マックイーンが愛用したことでも知られる、歴史的な名品です。
ロイク(Loake)
英国王室御用達を授かりながら、最も手の届きやすい価格帯を維持しているのがLoakeです。初めて本格的なイギリス靴を買うなら、まずはここからチェックすることをおすすめします。クラシックなデザインが豊富で、ビジネスの基本をすべて押さえることができます。
グレンソン(Grenson)
1866年創業の老舗ですが、デザインの振り幅が広いのがGrensonの面白さ。伝統的なグッドイヤーウェルト製法の靴はもちろん、近年では超軽量の厚底ソールを採用したモデルなど、ファッション感度の高い層からも支持されています。
2026年のトレンドと「失敗しない」選び方のポイント
現代のイギリス靴選びで意識したいのは、ライフスタイルの変化です。2026年現在は、かつてのような「ガチガチのフォーマル」だけでなく、より柔軟なスタイルが求められています。
- ソールの選択肢:以前はレザーソール(革底)が主流でしたが、現在はダイナイトソールやビブラムソールといった「ラバーソール(ゴム底)」を選ぶ人が増えています。見た目のスマートさはそのままに、滑りにくく、雨の日も履ける実用性が支持されています。
- ラスト(木型)の相性:イギリス靴は一般的に幅が狭く、甲が低いと言われます。しかし、最近は日本人の足型(幅広・高甲)に合わせた「アジアンフィット」や「インターナショナルラスト」を展開するブランドが増えました。試着の際は、踵(かかと)が抜けないか、小指が当たらないかを念入りにチェックしましょう。
- メンテナンスの楽しみ:M.MOWBRAYなどの高品質なケア用品で手入れをすることも、イギリス靴を履く醍醐味です。月に一度のブラッシングとクリーム補給だけで、革の輝きは見違えるほど良くなります。
イギリスの革靴ブランド15選。一生モノの選び方と憧れの老舗名門からコスパ派まで:まとめ
イギリスの革靴を履くということは、単に足を保護する道具を手に入れるだけでなく、その背後にある歴史や職人たちの魂を身にまとうということです。
ジョンロブやエドワードグリーンのような究極の1足を目指すのも素晴らしいですし、クロケット&ジョーンズやチーニーで実利とステータスを両立させるのも賢い選択です。また、サンダースやトリッカーズのように、タフに使い込んで自分だけの味を出す楽しみもあります。
どのブランドを選んだとしても、手入れを怠らなければ、その靴はあなたの人生の歩みに長く寄り添ってくれるはずです。今回ご紹介した15のブランドの中から、あなたの相棒となる最高の一足を見つけ出してください。
次は、気になるブランドのサイズ感や、具体的なメンテナンス方法について調べてみるのはいかがでしょうか?


