フルマラソンで「サブ4を目指したい」と思ったとき、どんなシューズを選ぶべきか迷う人は多いはず。そこで注目を集めているのが、アシックスのレーシングモデル「S4」だ。名前の通り、スピード（Speed）、安定性（Stability）、安全性（Safety）、そしてサブ4（Sub-4）を意味する“4つのS”を掲げた一足。今回は、その実力を実際の使用感や技術的な特徴を交えて掘り下げていく。
サブ4ランナーのためのリアルなレーシングモデル
S4は、アシックスが市民ランナーの「サブ4」達成を明確にゴールに据えて開発したモデル。上位シリーズのMETASPEEDで培ったノウハウをベースにしながら、より扱いやすく、安定して走れるようチューニングされている。
特徴的なのは、そのバランス感。トップアスリート向けのカーボンシューズが「速すぎて扱いづらい」と感じるランナーでも、S4なら安心してレース本番で使える。スピードだけを追い求めるのではなく、「最後までペースを崩さず走り切る」ことを最優先に設計されている点が大きい。
ミッドソールは高反発×安定構造の二層設計
S4の走行感を支えるのが、二層構造のミッドソールだ。
上層には、アシックス最上位素材のFF BLAST TURBO。軽くて高反発、踏み込むたびに前へ押し出されるような弾みがある。下層には、耐久性と安定性に優れたFLYTEFOAMを配置。この組み合わせにより、着地時のクッション性と蹴り出しの反発力、両方を高いレベルで両立している。
さらに、フルレングスのカーボンプレートを内蔵。かかとから前足部へ緩やかに傾斜した形状で、着地から蹴り出しまでの体重移動をスムーズにサポートする。これにより、特にフルマラソン後半の脚が疲れてきたタイミングでも、自然に前へ進む感覚が得られる。
安定感と安全性を支えるソール設計
S4は、ただ反発力が強いだけの“スピードモデル”ではない。アウトソールの接地面を広く取り、ブレを抑える設計になっている。これが安定性を生み、長距離でのフォーム維持に貢献してくれる。
素材にはアシックス独自のASICSGRIPラバーを採用。濡れた路面でも滑りにくく、ヒール部分には厚めのラバーを配置して耐久性も確保している。長い距離のトレーニングや本番レースでも、安心して使えるのが魅力だ。
軽量で快適なアッパーとフィット感
アッパーには、軽くて通気性の高いモーションラップアッパーを採用。これは、足全体を包み込むようにフィットしながらも、圧迫感がないのが特徴だ。走行中の足の動きに自然に追従し、反発や推進力をロスなく伝えてくれる。
シューズの重量は約241g（27cm基準）。フルマラソンを走るには軽すぎず、適度な安定感を残した絶妙なバランスだ。長時間のレースでも通気性が保たれ、蒸れにくいという声も多い。
実際の走行感 ― 反発と安定の両立
S4を履いて走ると、まず感じるのは「自然に前へ進む感覚」。FF BLAST TURBOの反発力とカーボンプレートのしなりが合わさり、無理に蹴らなくても推進力が得られる。
ドロップは6mm。かかと着地〜ミッドフット走法のランナーが最も恩恵を受けやすい設計だ。前傾姿勢を取りやすく、フルマラソン中盤以降でもリズムを崩さずにペースを維持できる。トップスピードを狙う“キロ3分台”のランナーにはやや物足りないかもしれないが、“キロ5分前後で安定して走る”層にはピッタリだ。
他モデルとの違い ― “扱いやすいカーボン”という立ち位置
アシックスのカーボン搭載シューズには、「METASPEED」や「MAGIC SPEED」などがある。
METASPEEDはトップ選手が使用するレベルで、反発力が極端に強く、扱いには慣れが必要。一方MAGIC SPEEDは軽量性を重視した設計で、スピード練習向けだ。
S4はその中間に位置する。高反発と安定性を両立し、サブ4〜サブ3.5を目指す層に最適化された“現実的なカーボンシューズ”。初めてカーボンモデルに挑戦したいランナーにもおすすめできる。
メリット ― サブ4ランナーが感じる5つの強み
- 高反発クッション
FF BLAST TURBOによる強い反発で、足取りが軽く感じられる。 - 優れた安定性
広い接地面と硬めのカーボンプレートが、ブレを最小限に抑える。 - 軽量で快適
約241gという重量とモーションラップアッパーが、疲労を軽減。 - グリップ力と耐久性
ASICSGRIPが濡れた路面でも安心感を与える。 - コストパフォーマンス
フラグシップ並みの性能を持ちながら、価格は2万円台前半と手が届きやすい。
これらの要素が、S4を“サブ4を狙うための現実的な最適解”にしている。
注意点 ― 合う人・合わない人を見極めよう
S4は非常に完成度の高いシューズだが、万能ではない。
いくつか注意すべき点もある。
- フィット感がややタイト
足幅が広い人は、ハーフサイズアップを検討したほうが良い。 - スピード特化ではない
キロ3分台のスピードランナーには反発が穏やかに感じることもある。 - 慣らしが必要
カーボンプレート特有の硬さがあり、最初の数回は足裏に違和感を覚える場合がある。
これらを踏まえて、自分の走力やフォームに合った使い方を見極めることが大切だ。
どんなランナーに向いているか
- フルマラソンでサブ4〜サブ3.5を目指す人
- 長距離でのペース維持を重視する人
- 初めてカーボンプレート入りシューズを試したい人
- ジョグではなく、テンポ走やペース走で使いたい人
トップスピードを競うよりも、安定して走り切るタイプのランナーにフィットする。
実際のユーザー評価と評判
多くのランナーから、「反発が強いのに安定している」「最後まで脚が残る」といった声が挙がっている。特にサブ4達成者の中では、「このシューズに変えてから後半の失速が減った」という評価も多い。
一方で「もう少し軽くてもいい」「サイズ選びが難しい」との声もあるが、総じて満足度は高い。初めてのカーボンシューズとして、安心して使える点が評価されている。
高反発クッションと軽量設計が生む“サブ4の現実力”
S4は、スピードを追い求めるだけのシューズではない。
「安定して走り切る」ことを重視し、反発・軽さ・安全性を絶妙なバランスで融合させている。高反発フォームとカーボンプレートの推進力、広い接地面がもたらす安定性、そして軽快なフィット感。この3つが、フルマラソン後半でも崩れない走りを支えてくれる。
「初めてのカーボンシューズが怖い」という人にも、S4は十分応えてくれるはず。扱いやすく、かつ本格的な反発を体感できる貴重なモデルだ。次のレースに向けて、「アシックスS4」で自分のベストタイム更新を狙ってみてほしい。
