バスケットボールシューズ選びで迷う人にとって、「軽さ」と「グリップ力」は永遠のテーマ。どちらかを優先すれば、もう一方を犠牲にしてしまうことが多い。しかし、アシックスが送り出した最新のローカットモデル「GLIDE NOVA FF 3(グライド ノヴァ エフエフ3)」は、その常識を塗り替える一足だ。今回はこのモデルの特徴や履き心地、前作からの進化点、そしてどんなプレーヤーに向いているのかを詳しく掘り下げていく。
軽さと安定性を両立したアシックスの新提案
GLIDE NOVA FF 3は、アシックスのバスケットボールラインの中でも「軽量ローカット」カテゴリーに位置づけられている。瞬時の加速、クイックな方向転換、速攻など、スピードを生かしたプレーを想定して設計されたモデルだ。
まず注目すべきはその軽さ。片足あたり約370グラム(サイズ28.5cm基準)という数字は、前作からさらに数グラムの軽量化を果たしている。ほんの数グラムの差でも、ゲームの終盤に足取りの軽さとして実感できる。この軽さがもたらすのは単なる“軽快さ”ではなく、「反応速度」や「切り返しの速さ」に直結する機動力だ。
しかし軽量化と引き換えに安定性が落ちるのが一般的な課題。アシックスはその点を「TRUSSTIC(トラスティック)構造」と「モノソックフィット」で克服している。足裏の中足部に搭載されたTPUプレートがねじれを防ぎ、激しいカットイン時でも足元をしっかり支える。さらに、シュータンとアッパーを一体化させたモノソック構造が、足を包み込むようにホールドし、ズレを防止する。
ジャカードメッシュアッパーが生み出す快適なフィット感
GLIDE NOVA FF 3の履き心地を語る上で欠かせないのが、アッパー素材の改良だ。合成繊維と人工皮革を組み合わせたジャカードメッシュは、足の動きに柔軟に追従しながらも高い耐久性を維持する。まるで靴下のように足を包み込み、履いた瞬間から自然と足になじむ感覚が得られる。
この構造のメリットは二つある。
ひとつは「通気性」。長時間のプレーでも熱がこもりにくく、蒸れを防いで快適さを保つ。もうひとつは「ホールド性」。激しい横方向の動きでもアッパーがしっかり足を固定し、無駄なブレを抑える。特にガードやウィングのようにスピードと敏捷性が求められるポジションでは、この安定したホールド感がプレーの質を大きく左右する。
また、前足部の補強範囲を前作より広げたことで、ストップ&ゴーを繰り返す動作でも耐久性が向上。プレー中に負荷がかかりやすい外側部分が強化されている点も、実用面での進化だ。
ソール構造に隠されたグリップ力の秘密
GLIDE NOVA FF 3のもう一つの特徴が、コート上での抜群のグリップ力だ。アウトソールにはバスケット特有の“マルチディレクションパターン”を採用し、どの方向に動いても安定した接地感をキープできる。特にアシックス独自のラバーコンパウンドは、体育館の木床に最適化されており、スリップを防ぎつつも滑らかに動ける絶妙な摩擦バランスを実現している。
そしてこのグリップ性能を支えるのが、前述したTRUSSTICプレートによる中足部の剛性だ。着地時のねじれを防ぐことで、足裏全体を均等に使える。結果として、グリップが“粘る”感覚が得られ、思い通りの方向転換が可能になる。軽さと強い接地感を両立したこのバランスこそ、「軽量性とグリップ力で差がつく」と評される理由だ。
履き心地とパフォーマンスを支えるディテール
足首まわりのパディングはソフトで、屈曲時にも圧迫感を感じにくい。モノソック構造により脱ぎ履きもスムーズで、試合前後の着脱ストレスが少ないのも好印象だ。
レビューでは「軽いのに安定感がある」「足首が自由に動かせる」「長時間プレーしても疲れにくい」といった声が多い。これは単に素材の軽さだけでなく、足全体を自然な角度で支える設計バランスの賜物だ。ソールのクッション性は過剰ではなく、沈み込みすぎない分、俊敏な反応を生む。反発力よりも“接地感と一体感”を重視するプレーヤーにとっては理想的な感触だろう。
前作GLIDE NOVA FF 2との違い
前モデルと比較すると、最も大きな進化は「軽さ」と「補強の最適化」だ。FF 2ではやや厚みのある素材とパッド構造が採用されていたが、FF 3ではその無駄を削ぎ落とし、動きやすさを優先している。それでいて、補強範囲を拡大することでサポート力は維持。軽くなっても安定感を損なわないという、理想的なアップデートだ。
また、アッパーのメッシュが細かくなり、フィット性が向上。履き始めから足に馴染みやすく、ブレイクイン期間(慣らし時間)が短いのも大きな改善点だ。前作を使っていたプレーヤーが乗り換えても違和感が少なく、むしろ自然に動けるようになったという声が多い。
GLIDE NOVA FF 3が向いているプレーヤー像
このモデルは、以下のようなプレースタイルの人に特におすすめできる。
- スピードを武器にするガード/ウィング
ドライブ、フェイント、スピンムーブなど、機敏な動きが多いプレーヤーに最適。軽さとグリップがスムーズな切り返しを支える。 - 部活動やクラブチームの中高生プレーヤー
価格が1万円前後と比較的手頃で、練習用にも試合用にも使いやすい。軽くて動きやすいため、初めての本格的バッシュとしても人気が高い。 - 複数足を使い分けたいプレーヤー
重めのハイカットバッシュと併用して、「軽快バッシュ枠」として履くのも良い。練習日やアップ用に使えば、足の負担を軽減できる。
一方で、パワーフォワードやセンターのようにジャンプ・接触プレーが多いポジションでは、クッション性重視のモデルの方が合う場合もある。GLIDE NOVA FF 3は“軽快・俊敏系”のプレーヤー向けだと覚えておこう。
耐久性と実用性のバランス
軽量バッシュの弱点は耐久性にあるが、このモデルはその点も抜かりない。補強パーツの配置が的確で、摩耗しやすいアウトサイド部分には強化素材を使用。さらに、アウトソールには「NON-MARKING RUBBER」を採用し、室内コートを汚さない仕様になっている。
ただし、屋外コートでの使用は推奨されていない。グリップ力と摩耗耐性のバランスは体育館の床を基準に設計されているため、アスファルトやコンクリートではラバーが早く削れてしまう。屋内用として使うのがベストだ。
実際の使用感と評価
国内外のレビューを見ても、GLIDE NOVA FF 3は高評価を得ている。
「軽くて動きやすい」「足に吸い付くようなフィット感」「スピードプレーがしやすい」「デザインがシンプルでかっこいい」など、ポジティブな声が多数を占める。
特に印象的なのは、「足の一体感がすごい」というコメント。モノソック構造がもたらす包み込み感と、ジャカードメッシュの柔らかさが組み合わさることで、まるで素足で動いているような感覚を得られるという。
一方で、「幅がやや細め」「クッション性は控えめ」という意見もあり、足幅が広い人やクッション重視派は注意が必要だ。
価格とコストパフォーマンス
価格は店舗や時期によって異なるが、概ね8,000〜11,000円前後で推移している。機能性を考えればコストパフォーマンスは非常に高い。学生プレーヤーが練習と試合の両方で使える万能バッシュとしても優秀で、リピート率の高いモデルでもある。
また、サイズ展開が23.0cm〜30.0cmまでと幅広く、ジュニアから大人までカバーできるのもアシックスならでは。男女問わずフィットするため、チーム単位で統一モデルとして採用している例も見られる。
まとめ:軽量性とグリップ力で差がつく、次世代ローカット
アシックスGLIDE NOVA FF 3は、軽さと安定性、グリップ力のバランスを高次元でまとめ上げた一足だ。モノソック構造による快適なフィット感、TRUSSTICプレートが支える安定性、そして軽量ソールが生み出す俊敏な動き。そのすべてが噛み合って、プレーヤーのスピードとコントロールを最大限に引き出してくれる。
スピードで勝負したい。軽やかにコートを駆け抜けたい。そんなプレーヤーにとって、GLIDE NOVA FF 3はまさに理想の相棒となるはずだ。軽量性とグリップ力、その両方で差をつけたいなら、この最新モデルを一度試してみてほしい。


