アシックスのスニーカーを語る上で外せないキーワードが「GELシリーズ」。
ランナーからファッション好きまで、幅広い層に支持されている定番ラインだ。
この記事では、アシックスGELシリーズとは何か、その歴史や特徴、そして今もなお人気を集める理由を丁寧に掘り下げていく。
GELシリーズの誕生と背景
アシックスの「GEL（ゲル）」は、ブランドを象徴するクッションテクノロジー。
もともとは1980年代に登場し、日本の素材メーカーと共同で開発されたシリコン系ゲル素材「αGEL（アルファゲル）」が原点とされている。
この素材は非常に高い衝撃吸収性を持ち、18メートルの高さから生卵を落としても割れない、という実験で知られていたほどだ。
1986年に発売されたランニングシューズ「GT-II」や「フリークスα」に初めてGELが搭載され、アシックスの技術革新の象徴として一気に注目を集めた。
それ以来、GELシリーズは単なるクッション機能ではなく、「走る人を守る」「長く快適に歩ける」ことを追求するアシックスの哲学を体現する存在になっていった。
GELシリーズが目指したのは“快適さと安定性の両立”
GELの最大の特徴は、足裏への衝撃をやわらげる高いクッション性能。
ランニング中はもちろん、日常の歩行でも膝や腰への負担を軽減してくれる。
柔らかいだけでなく、着地時のエネルギーをスムーズに前へと伝える反発性も持っているため、自然で疲れにくい歩行を実現できるのが魅力だ。
加えて、アシックスはGELに頼るだけでなく、EVAフォームやFlyteFoamといった軽量素材、安定性を高めるソール構造を組み合わせている。
その結果、クッション性・反発力・安定性という三拍子がそろったバランスの取れた履き心地を生み出しているのだ。
代表的なモデルたち
GELシリーズといっても、目的やデザインの異なる多様なラインが存在する。
ここでは特に代表的で、現在も高い人気を誇るモデルをいくつか紹介する。
GEL-LYTE III（ゲルライトスリー）
1990年に登場した名作で、GELシリーズの中でも最も象徴的な一足。
スプリットタン（分割されたシュータン）を採用し、足の甲にフィットする独自構造を持つ。
軽量で柔らかく、デザイン性も高いため、ランニングだけでなくストリートスニーカーとしても絶大な支持を得ている。
GEL-LYTE IIIは数々のブランドやデザイナーとのコラボモデルも多く、スニーカーファンのコレクション対象になるほどの人気を誇る。
GEL-KAYANO（ゲルカヤノ）
1993年に初代が登場して以来、30年以上続くロングセラー。
特徴は「安定性重視」の設計で、オーバープロネーション（足が内側に倒れる癖）のあるランナーにとって特に頼れる存在だ。
最新のGEL-KAYANO 31では、アシックス独自のFF BLAST PLUS ECOフォームを採用し、より軽く弾むようなクッション感を実現している。
ファッションの世界でも注目度が高く、GEL-KAYANO 14の復刻をきっかけにストリートシーンで再び脚光を浴びている。
スポーツとスタイルをつなぐ“ハイブリッドスニーカー”の代表といえるだろう。
GEL-NIMBUS 27（ゲルニンバス）
1999年に初登場し、「雲の上を走るような履き心地」で知られるクッショニングモデル。
その名の通り、ふかふかのソールが最大の特徴で、長距離ランやウォーキング、立ち仕事にも向いている。
現在の最新版「GEL-NIMBUS 27」では、ミッドソール全面にFF BLAST PLUS ECOを搭載し、従来よりも軽量化と反発力アップを両立。
履いた瞬間から柔らかさと安定感が伝わる快適なシューズだ。
GEL-NIMBUS 27は、ランニングに限らず「毎日履けるクッションシューズ」としても評価が高い。
GEL-NYC（ゲル エヌワイシー）
近年注目を集めているのが、2023年に登場したGEL-NYC。
GEL-NIMBUS 3など過去の名作モデルをベースに、現代的なデザインへと再構築されたライフスタイルスニーカーだ。
厚めのソールとレトロなパネルデザインが融合し、街歩きやファッションコーディネートにも馴染む。
ランニングシューズの快適さをそのままに、ファッションアイテムとして成立しているのがGEL-NYCの魅力。
今では海外スニーカーブランドとのコラボも続々登場し、若い層を中心に人気が高まっている。
ランニングからファッションへ ― GELシリーズの進化
GELシリーズは、もともと「走るための靴」として誕生した。
しかし近年は、アスリートだけでなく、日常で快適さを求める一般ユーザーや、スニーカーファッションを楽しむ層にも浸透している。
特にGEL-KAYANO 14やGEL-NYCのように、90〜2000年代のデザインを現代的にアップデートしたモデルは、トレンドの“Y2Kスタイル”や“テック系スニーカー”の流れにもマッチ。
実用性だけでなく、ファッション性の高さがGELシリーズ再評価のきっかけとなっている。
また、アシックスはサステナビリティにも注力しており、最新モデルでは植物由来の素材やリサイクルポリエステルを積極的に採用。
「履き心地の良さ」と「地球への配慮」を両立する姿勢も、多くの支持を集めている。
なぜGELシリーズは長年愛され続けているのか
1. 抜群のクッション性
GEL素材がもたらす衝撃吸収力は、他のブランドにはない強み。
長時間のランニングやウォーキングでも足への負担を抑え、疲れにくい履き心地を提供する。
2. 安定した設計
アシックスは日本人の足型研究を重ね、自然な重心移動をサポートする設計を徹底。
特にGEL-KAYANOのような安定性重視モデルは、初心者から上級者まで幅広いランナーに信頼されている。
3. デザインの多様性
スポーティーからクラシック、モードまで幅広いスタイルに対応。
GEL-LYTE IIIやGEL-NYCなどはストリートファッションの定番としても人気を博している。
4. 信頼できるブランド力
アシックスは1949年創業以来、常に研究開発を重ねてきたメーカー。
“機能と関係ないデザインはしない”という理念が、今もGELシリーズの根底に息づいている。
これからのGELシリーズ ― 進化する伝統
GELシリーズは、単なる定番では終わらない。
アシックスは最新のミッドソール技術「FlyteFoam」や「PureGEL」を組み合わせ、より軽く、より快適に進化させている。
さらに、GEL-KAYANOシリーズやGEL-NIMBUSシリーズでは、ランニングアプリやスマートデバイスと連携するモデルも登場しており、デジタル時代に合わせた“走る体験”の拡張が進んでいる。
同時に、ライフスタイル向けGELシリーズでは、デザイナーとのコラボレーションや限定カラー展開も盛んだ。
GEL-LYTE IIIやGEL-1130など、復刻モデルが次々と再販されることで、かつての名作が現代のストリートに蘇っている。
アシックスGELシリーズとは？代表モデルの特徴と人気の理由を詳しく紹介
結局のところ、アシックスGELシリーズがここまで長く愛されてきた理由は、機能・デザイン・信頼の三拍子が揃っているからだ。
走る人にも、歩く人にも、ファッションを楽しむ人にも応える万能性。
そして何より、「履いていて気持ちがいい」という体験そのものが、ブランドの魅力を支えている。
GELシリーズは、単なるスポーツシューズではない。
それはアシックスの歴史と技術、そして“人の動きを支える”という哲学の結晶だ。
これからも新しいモデルやコラボを通じて、GELシリーズは進化を続けていくだろう。
