ランニングシューズ選びで「スピード」「反発」「安定性」をどう両立するか——これは多くのランナーが直面するテーマです。アシックス ソニック ブラストは、そのバランスを極限まで追求した一足。2025年に登場したこのモデルは、BLASTシリーズ初のプレート搭載シューズとして注目を集めています。
今回はその履き心地や機能性、どんなランナーに向くのかを徹底的に掘り下げます。
ソニック ブラストとは?BLASTシリーズの新たな進化系
アシックス ソニック ブラストは、アシックスの人気シリーズ「BLAST」ファミリーの中でも特に“スピード特化”として設計されたモデルです。
価格は22,000円(税込)前後、重量は約256g(27cm片足)。厚底ながらも軽量で、テンポ走やインターバルなどスピード練習に最適化されています。
シリーズの他モデルと比べると、位置づけは次のようになります。
- NOVABLAST 5:毎日ジョグ用。柔らかく弾むような走り心地。
- SUPERBLAST 2:オールラウンドタイプ。テンポ走からロングまで対応。
- アシックス ソニック ブラスト:スピード練習用。反発と推進力を最大化するための一足。
つまり、アシックス ソニック ブラストは「日常トレーニングではなく、速さを求める日のための靴」。レーシングモデルとトレーニングモデルの中間に位置づけられています。
二層ミッドソールとプレート構造が生む推進力
アシックスがこのモデルで導入した最大の新要素は、二層構造のミッドソールと樹脂プレート「ASTROPLATE」の組み合わせです。
上層には「FF TURBO SQUARED」、下層には「FF BLAST MAX」。どちらも軽量で反発性に優れたフォームで、踏み込みの力を前方へ効率よく変換します。
従来のFF TURBO素材よりも約30%以上反発が向上しており、脚離れのよさと跳ねる感覚が強化されています。
ASTROPLATEはPebax系の樹脂プレートで、カーボンプレートほどの硬さはなく、適度にしなやか。
足裏の中央部分に内蔵されており、接地から蹴り出しまでの重心移動をスムーズに導きます。その結果、「脚に優しいのに速い」という特性を実現しています。
実際の履き心地と走行感覚
履いてまず感じるのは、ソフトで厚みのあるクッション性。ヒールの厚さは約46mmにもなり、地面の衝撃をしっかり吸収します。
それでいて、沈み込みすぎず、反発で前に押し出されるような感覚があります。
走り出すと、ミッドソールの反発とプレートのしなりが一体となって推進力を生みます。
「足が勝手に前に出る」という表現がまさにぴったり。テンポ走や閾値走では、一定のペースを維持しやすく、リズムが自然に安定します。
一方で、ジョグやリカバリー目的のランニングではやや硬さを感じることも。柔らかく転がるような走りを好む人には少し反発が強すぎるかもしれません。
アッパー・アウトソールの特徴
アッパーはエンジニアードメッシュ素材で、通気性とホールド性のバランスが絶妙です。
包み込まれるようなフィット感があり、足とシューズの一体感を感じやすい仕上がり。
ただし、ラスト(足型)は標準的な2E相当のため、幅広の足型には窮屈に感じる場合があります。
アウトソールには「ASICSGRIP」が採用され、濡れた路面でも高いグリップ力を発揮します。
この安定感のおかげで、スピード練習中でも横ブレが少なく、接地感がしっかりしています。
他モデルとの比較で見える「ソニック ブラスト」の個性
アシックス ソニック ブラストを一言で表すなら、「速さを楽しむ厚底シューズ」。
ジョグよりも、スピードや推進力を求めるランナーに焦点を合わせたモデルです。
- NOVABLAST 5:柔らかく跳ねる、リラックスラン向け。
- SUPERBLAST 2:万能。スピードも長距離もこなせる。
- アシックス ソニック ブラスト:スピード練習専用。テンポ走・閾値走の“切り札”。
特にサブ4〜サブ3.5を目指す中〜上級ランナーにとって、練習の質を上げるツールとして最適です。
一方で、初心者ランナーが日常的に使うには、やや剛性が高くオーバースペック気味。使い分けが鍵となります。
レビューでわかる評判と評価
多くのランナーが挙げる好評価ポイントは次の通りです。
- クッション性と反発のバランスが良い
- 軽量でテンポ走が快適
- カーボンほど硬くないため脚が疲れにくい
- グリップが強く、安定感がある
一方、課題として指摘されるのは次の点です。
- トゥボックス(つま先部)がやや狭い
- ジョグには向かず、用途が限定される
- 厚底のため公式レースでは使用制限の可能性あり(WA規定40mm超)
総合的には「脚への負担が少なく、反発を感じながらスピード練習をこなせる」という声が多く、満足度は高いモデルといえます。
どんなランナーにおすすめか
アシックス ソニック ブラストが最も輝くのは、“速く走る練習”を重視するランナーです。
サブ4を狙う市民ランナーや、週に数回テンポ走や閾値走を行うランナーには理想的。
また、「レース用のカーボンシューズは硬すぎる」と感じる人にもおすすめです。
逆に、ジョグ中心や長距離LSDがメインの人には、NOVABLAST 5やゲルニンバスシリーズの方が合うでしょう。
「アシックス ソニック ブラスト=スピード練習の日専用」という割り切りが、この靴を最も活かす使い方です。
総評:スピードと快適性を両立する新時代の厚底
アシックス ソニック ブラストは、厚底シューズの新しい方向性を示すモデルです。
プレートによる推進力と柔らかなクッションが両立し、スピード練習を快適に支える。
一足で万能にこなすタイプではありませんが、「スピード練習をもっと効率的にしたい」「レーシングシューズのような刺激を練習でも感じたい」というランナーにとっては理想的な選択肢になります。
高反発フォームとASTROPLATEの相乗効果によって、走りにキレが生まれ、1kmあたりのタイムも自然と安定。
スピード練習の質を上げたい人にとって、アシックス ソニック ブラストは確実に武器になる一足です。
アシックス ソニック ブラストで“速さ”を体感しよう
アシックス ソニック ブラストは、ただ速いだけの靴ではありません。
厚底の安心感を保ちながら、推進力と軽さをバランスさせた設計で、「走る楽しさ」を再発見させてくれるモデルです。
練習用シューズとしての完成度は非常に高く、アシックスのテクノロジーが凝縮された一足。
スピードを追求するトレーニングを取り入れたいなら、次に試すべきは間違いなくこの「アシックス ソニック ブラスト」です。


