アシックスの象徴ともいえる「GEL（ゲル）シリーズ」。1980年代の誕生以来、ランニングからストリートまで幅広く支持され続けてきた定番ラインです。この記事では、GELシリーズの歴代モデルや技術の進化、そして今なお愛される理由をわかりやすく紹介します。スニーカー好きだけでなく、履き心地重視の人にも役立つ内容です。
GELテクノロジーの始まりと誕生秘話
アシックスのGELテクノロジーが登場したのは1986年。当時のランニングシューズはクッション性が十分とはいえず、長距離ランナーの膝や足首に大きな負担がかかっていました。そこでアシックスが開発したのが、衝撃を吸収するゲル素材「αGEL（アルファゲル）」です。
この素材は、着地時の衝撃をやわらげながら反発力も維持できる画期的なもの。ソール内部にゲルを埋め込むことで、まるで地面からの衝撃を吸い取るような滑らかな着地を実現しました。
初期には「GT-II」「フリークスα」といったランニングシューズに採用され、その効果が瞬く間に話題に。これが後に「GELシリーズ」としてブランド化されていくきっかけになります。
GEL-LYTEシリーズ：軽さとファッション性を両立した名作
GELシリーズの代表作といえば、「GEL-LYTE（ゲルライト）」です。1987年に初代が登場し、軽量性とデザイン性を両立させた革新的モデルとして人気を集めました。
特に注目すべきは1990年に発売された「GEL-LYTE III」。シュータン（ベロ）を縦に分割した“スプリットタン構造”が特徴で、足の甲への当たりを軽減し、長時間履いても快適なフィット感を提供します。
GELの柔らかいクッション性と相まって、ランニングだけでなく日常使いにも適した万能スニーカーとして高評価を得ました。
さらに、GEL-LYTE IIIはストリートカルチャーのなかでも特別な存在です。海外ブランドとのコラボや復刻版が続々と登場し、現在ではファッションアイテムとしても定番化しています。
90年代のスニーカーブームを象徴するモデルとして、いまなお根強いファンを持つ理由がここにあります。
GEL-KAYANOシリーズ：安定性と走行性能の王道モデル
1993年に登場した「GEL-KAYANO（ゲルカヤノ）」は、長距離ランナー向けに開発された安定感重視のシリーズ。足の内側が倒れ込む“オーバープロネーション”を防ぐ設計が特徴で、アシックスの技術の粋を集めた一足です。
初代から最新のGEL-KAYANO 32（2025年モデル）に至るまで、常に進化を続けています。ミッドソールには軽量で反発性に優れた素材を採用し、クッション性と安定性の両立を実現。最新モデルでは「3D SPACE CONSTRUCTION™」という立体構造が加わり、足の沈み込みを抑えながら自然な足運びをサポートします。
また、近年ではファッションシーンでも再評価されており、2008年の「GEL-KAYANO 14」などは復刻モデルとして注目を集めています。
かつては純粋なランニングシューズだったGEL-KAYANOが、いまでは“街履きでも映えるスニーカー”として再び人気を博しているのです。
GEL-NIMBUSシリーズ：クッション性の頂点に立つ快適モデル
「GEL-NIMBUS（ゲルニンバス）」は、クッション性を極限まで追求したニュートラルランニングシューズ。1999年の登場以来、柔らかな履き心地と安定した走行感で多くのランナーに愛されてきました。
最新のGEL-NIMBUS 27（2025年モデル）では、さらに軽量化されたソールと通気性に優れたアッパーを採用。足を包み込むようなフィット感を保ちながら、長時間のランニングやウォーキングでも疲れにくい構造になっています。
また、普段使いでも履きやすく、デザイン面でも洗練されているため、ランニング目的以外にも選ばれるケースが増えています。
このシリーズは“柔らかさ重視”という明確なコンセプトがあり、GEL-KAYANOのような安定性重視モデルとは対照的。足への優しさを求める人にとって、理想的な一足といえるでしょう。
GEL-NYCや復刻モデルに見る現代的進化
近年注目を集めているのが、「GEL-NYC」や「GEL-2055」といったスポーツスタイル向けの派生モデル。
これらは、過去のランニングアーカイブを現代風に再構築した“ハイブリッドスニーカー”です。たとえばGEL-NYCは、2000年代初期の「GEL-NIMBUS 3」などの要素を取り入れつつ、最新のクッション構造を融合しています。
見た目はクラシックでありながら、履き心地は最新。ファッションシーンでも存在感があり、ストリートブランドとのコラボも多数展開されています。
こうした復刻・再構築の流れは、GELシリーズが単なるランニングシューズではなく、カルチャーの一部として生き続けている証でもあります。
GELシリーズが愛され続ける理由
長年にわたりGELシリーズが多くの人に選ばれ続けている理由は、単なる機能性の高さだけではありません。
そこにはアシックスの哲学と職人技が息づいています。
アシックスは創業以来、「すべての人々に健全な身体と心を」という理念を掲げてきました。GELシリーズはその象徴といえる存在。快適な走りを支える機能を徹底的に追求しつつ、余計な装飾を省いた“機能美”をデザインに昇華しています。
さらに、履く人のライフスタイルに合わせて進化し続けている点も魅力です。
ランナーにとっては信頼できる相棒であり、ファッション好きにとっては個性を表現するキャンバス。GELシリーズは、まさに“機能と感性の融合”といえるでしょう。
歴代モデルを振り返って見えてくるGELシリーズの本質
ここまでGEL-LYTE、GEL-KAYANO、GEL-NIMBUS、GEL-NYCなどを紹介してきましたが、どのモデルにも共通しているのは「快適さを科学する」という一貫した姿勢です。
1980年代の誕生から40年近く経った今でも、GELシリーズは進化を止めません。
ランニングに特化した性能を追求する一方で、デザインやカラー展開の幅も拡大。老若男女を問わず、誰もが自分に合った一足を見つけられるようになりました。
これこそが、GELシリーズが“歴代モデルを超えて受け継がれてきた価値”といえるのではないでしょうか。
アシックス ゲル シリーズ歴代モデル一覧から見る未来
アシックスのGELシリーズは、単なるスニーカーの枠を超え、長い歴史と進化を重ねてきたブランドの象徴です。
初期のランニングモデルから、現代のライフスタイルスニーカーまで、その歩みはまさにアシックスの技術力と哲学の結晶。
今後もGELシリーズは、クッション性や安定性といった機能面だけでなく、サステナブルな素材開発やデザイン面でもさらなる革新を見せてくれるでしょう。
「走る」「歩く」「履く」を快適にするという原点を守りながら、GELシリーズの物語はこれからも続いていきます。
