アシックスのシューズといえば、履き心地の良さやフィット感に定評があります。その中でも、かつて「最高峰の素材」と呼ばれたのがカンガルーレザー。プロのサッカー選手や競技者にも愛されてきたこの素材は、軽さと柔軟性を両立した天然皮革として長年支持されてきました。この記事では、アシックスが誇るカンガルーレザー採用モデルの特徴、選び方、そして今後の動向までを徹底的に解説します。
カンガルーレザーとは？アシックスが採用してきた理由
カンガルーレザーは、薄くて軽く、それでいて引き裂き強度が高い天然皮革です。他の動物皮に比べて繊維の密度が高く、耐久性と柔軟性を兼ね備えています。この性質が「素足感覚の履き心地」を求めるアスリートたちに支持されてきました。
アシックスがカンガルーレザーを採用した理由は明確です。スピード、フィット、タッチ、そして安定性――これらをすべて高次元で両立できる素材だったからです。特にサッカーやフットサル、ラグビーなど、激しい動きを伴う競技用シューズでは、薄くても丈夫なレザーが理想的とされてきました。
カンガルーレザーの特徴：軽さと柔らかさのバランス
1. 驚くほどの軽量性
一般的な牛革よりも薄く、同じ強度でありながら重量は軽いのがカンガルーレザーの大きな特徴です。アシックスのスパイクやトレーニングシューズでも、軽快な動きを求めるプレイヤーに選ばれてきました。
2. 高いフィット感と柔軟性
革が薄いことで足の形に馴染みやすく、履くほどに「自分専用の一足」に変化していきます。特につま先から中足部にかけて、足を包み込むような感触は人工皮革にはない魅力です。
3. 通気性と自然なフィーリング
天然素材ならではの通気性があり、長時間の使用でも蒸れにくいというメリットも。素足感覚に近い感触を求める人にとって、まさに理想的な素材でした。
カンガルーレザー採用モデルの代表例
アシックスが展開してきた中でも特に人気を博したのが「DS LIGHT X-FLY PRO」シリーズや「ASICS C3 FF TF」などのサッカー・フットサル系モデルです。
たとえば「ASICS C3 FF TF」は、前足部にカンガルーレザーを使用し、ターフ用トレーニングモデルとして“極上のフィット感”を謳っていました。柔軟で包み込むような履き心地は、多くの競技者から「天然皮革の最高峰」と評されました。
また、ラグビーや野球の一部上位モデルでも、ボールコントロール性能や足の感覚を重視するプレイヤー向けにカンガルーレザーが使われていました。これらのモデルは、素材にこだわるプレーヤーの間で今でも人気が高く、中古市場や在庫限りの商品として取引されています。
アシックスがカンガルーレザーを廃止した背景
2025年、アシックスはカンガルーレザーの使用を正式に終了すると発表しました。理由は大きく分けて3つあります。
- 動物愛護と倫理的観点
世界的に動物保護の意識が高まり、野生動物由来の皮革使用が問題視されるようになりました。アシックスも企業としてサステナビリティ方針を強化し、この流れに対応しました。 - 新素材の技術革新
カンガルーレザーを超える人工皮革「SILKYWRAP（シルキーラップ）」が登場。天然皮革と同等の柔らかさ・耐久性を持ち、さらに軽量で環境負荷が少ない素材です。これにより、性能面でのカンガルーレザー依存が不要になりました。 - 安定供給と品質管理
天然素材は個体差があり、安定的な品質を保つのが難しいという課題もありました。合成素材に切り替えることで、より均一な品質を実現できるようになったのです。
アシックスは単に“環境に配慮したからやめた”のではなく、「機能性を維持した上で持続可能な選択をした」という点が大きなポイントです。
カンガルーレザーと人工皮革の違いを理解しよう
天然皮革（カンガルー）の長所
- 柔らかく、足に馴染みやすい
- 通気性が高く、快適
- 使い込むほど足の形にフィット
天然皮革の短所
- 水や湿気に弱く、メンテナンスが必要
- 経年劣化や硬化が起こりやすい
- 価格が高く、入手も不安定
人工皮革の長所
- 軽くて丈夫、雨でも気にせず使える
- メンテナンスが容易
- 均一な品質で大量生産が可能
人工皮革の短所
- 天然皮革ほどの“馴染み感”がない（ただし近年は改善）
- 通気性に劣る場合がある
アシックスの最新素材「SILKYWRAP」は、これらの欠点をほぼ克服しています。カンガルーレザーのような柔らかさを持ちながら、より軽く、環境にも配慮した新世代素材です。
カンガルーレザーモデルを選ぶときのポイント
もし今あえてカンガルーレザー採用モデルを探すなら、次の点を意識しましょう。
- 在庫状況を確認する
2025年以降は新製造が止まるため、入手できるのは在庫限り。スポーツショップやオンライン販売で「天然皮革（カンガルー）」表記のあるモデルを探す必要があります。 - サイズ感とフィット感を最優先に
天然皮革は伸びやすい特徴があるため、ややタイトめを選ぶのがポイント。履き込むことで足に馴染み、理想のフィット感になります。 - メンテナンスを怠らない
天然革は乾燥や水分に弱いので、専用クリームや防水スプレーでケアを行いましょう。これを怠るとひび割れや硬化の原因になります。 - 購入時期を逃さない
アシックスのカンガルーレザー採用モデルは今後希少価値が上がる可能性があります。欲しいモデルがあれば早めの確保が賢明です。
現在も購入できるカンガルーレザー採用モデル
オンライン上ではまだ「ASICS C3 FF TF」や「DS LIGHT X-FLY PRO」などが在庫として見つかる場合があります。いずれもフィット性を重視した設計で、前足部にカンガルーレザーを使用した本格派モデルです。価格はおおむね1万5千円〜2万円前後。新品を手に入れられるのは今のうちといえるでしょう。
また、中古市場でも状態の良いものが出回っていますが、使用感や劣化状態には個体差があるため、購入前の確認が欠かせません。
アシックスの新素材「SILKYWRAP」との違い
SILKYWRAPはアシックスが独自開発した合成皮革で、名前の通りシルクのようにしなやかで柔らかいのが特徴です。
内部構造を微細にコントロールすることで、カンガルーレザーの「しなり」と「包み込み感」を再現。さらに耐水性・耐久性も向上しており、試合中のパフォーマンスを安定させる効果も期待できます。
つまり、SILKYWRAPは「カンガルーレザーを超える素材」として登場した新世代のスタンダード。これにより、アシックスのシューズはより軽く、環境に優しい方向へ進化しています。
カンガルーレザー採用モデルの価値と今後の選択
カンガルーレザーを使ったアシックスのシューズは、もはや“過去の名品”となりつつあります。しかし、フィット感や柔らかさを重視する層にとって、その価値が消えるわけではありません。天然素材ならではの感触や伝統的な質感を求める人には、今でも十分魅力的な選択肢です。
一方で、アシックスが掲げる新しい方向性は「性能と持続可能性の両立」。SILKYWRAPなどの最新素材を搭載したモデルは、カンガルーレザーに劣らぬ履き心地と耐久性を実現しています。
まとめ：アシックス カンガルーレザーの魅力と今後の選び方
アシックス カンガルーレザー採用モデルは、長年にわたりアスリートに愛されてきた伝統の象徴です。軽さ、フィット感、柔軟性――そのすべてが足の一部になるような履き心地を提供してきました。
しかし、2025年以降はサステナブルな時代へ。アシックスはカンガルーレザーを卒業し、新素材へと進化を遂げています。
もしあなたが今、あの独特の天然皮革の感触を味わいたいなら、今がラストチャンス。
そして未来を見据えるなら、SILKYWRAP搭載の新モデルを選ぶのも一つの答えです。
いずれの選択にしても、“履いた瞬間にわかるアシックスのフィット感”は変わりません。
カンガルーレザーから始まったアシックスの革新は、今も進化を続けています。
