最近、スポーツ用品大手「アシックス(ASICS)」の株価がじわじわと上昇しているのをご存じでしょうか。
ランニングブームの再燃やファッションとしてのスニーカー需要の拡大など、アシックスを取り巻く環境は明るいニュースが続いています。この記事では、2025年の企業業績や市場動向をもとに、アシックス株価の上昇要因と今後の見通しをわかりやすく解説していきます。
業績好調が続くアシックス、2025年も過去最高ペース
まず注目したいのは、2025年のアシックスの業績です。
2025年12月期第3四半期(1〜9月)の連結決算では、売上高が約6,250億円と前年同期比19%増加。営業利益は約1,276億円で39%増と、収益力の高さが際立ちました。純利益も約863億円と前年から3割以上の伸びを見せ、過去最高を更新する勢いです。
特に目立つのが、「SportStyle」と呼ばれるファッション寄りのカテゴリーと「Onitsuka Tiger(オニツカタイガー)」ブランドの快進撃。これらが全体の売上を大きく押し上げています。
アシックスといえば「ランニングシューズの王道」というイメージが強いですが、最近はライフスタイル分野でも存在感を高めており、若者を中心に人気が再燃しているのです。
株価上昇の背景にある3つの要因
アシックスの株価上昇を支える要因は、大きく分けて3つあります。
1. 世界的なスポーツ需要の回復
コロナ禍を経て健康志向が高まり、ランニングやウォーキングを日常に取り入れる人が増加しました。
都市型マラソンや市民ランナーの増加も続いており、アシックスの主力である「パフォーマンスランニングシューズ」分野が好調。
特に「GEL-KAYANO」や「METASPEED」などの高機能シリーズが国内外で安定的に売れています。
2. ライフスタイル市場の拡大とオニツカタイガーの存在
もう一つの追い風が「スニーカー=ファッション」というトレンドです。
Onitsuka Tigerは、ヨーロッパやアジア圏でファッションスニーカーとして高く評価されており、店舗展開やコラボレーションモデルも人気。
スポーツブランドの域を超えた“カルチャー的ブランド価値”が、企業全体の売上を支えています。
3. 収益体質の改善とグローバル分散
アシックスは単なる売上増だけでなく、利益率の改善にも成功しています。
欧州、中国、東南アジアなど幅広い地域でバランスよく収益を上げており、為替や地域経済の影響を受けにくい体制を築いています。
これにより、安定した収益を維持しながらブランドの成長投資も続けられる構造になっているのです。
投資家の視点から見る「今のアシックス株」
投資家やアナリストの間では、「アシックス株はやや割安」との見方もあります。
理論株価モデルでは4,300円前後という評価が出ており、実際の株価はまだ上昇余地を残している水準とされています。
また、ROE(自己資本利益率)の改善が続いており、企業としての収益性の高さが市場で再評価されている点もポイントです。
さらに、配当も安定しています。2025年度は1株あたり28円の配当予想で、企業の利益成長を背景に今後の増配余地もありそうです。
株価が短期的に上下しても、長期で見れば堅実な成長を狙える銘柄として注目度が高まっています。
アシックスを取り巻く市場トレンド
健康志向の定着
ランニングやウォーキングは、いまや一過性のブームではなく生活習慣の一部に定着しました。
フィットネスアプリやウェアラブルデバイスの普及もあり、運動を「データで管理する」流れが広がっています。アシックスはこうしたニーズに合わせ、デジタル連携サービスも強化しています。
ファッションスニーカーとしての再評価
Onitsuka Tigerを中心に、アシックスのスニーカーが「おしゃれな日本ブランド」として再評価されています。
特に海外では、“Japan heritage”や“クリーンなデザイン”が評価され、欧州の都市部ではハイブランドと並ぶ位置づけに。
東京・大阪・ソウルなどで展開される旗艦店も人気で、ブランド体験を重視する若年層に支持されています。
環境・サステナビリティへの取り組み
アシックスは、素材のリサイクルや環境負荷低減にも積極的。
「CO₂排出量の見える化」などESG経営を進めており、長期投資家からの評価も高い傾向です。
こうした非財務的な努力も、株価の安定性を支える裏側にあります。
注意すべきリスクと今後の課題
業績が好調でも、リスクがないわけではありません。
主な懸念点としては次のようなものが挙げられます。
- 流行変化の速さ:スニーカートレンドの移り変わりが早く、ヒットモデルが途切れると販売が鈍化する可能性。
- 為替変動の影響:海外比率が高いため、円高局面では収益圧迫のリスク。
- 競合の激化:ナイキ、アディダス、ニューバランスなどとの競争が依然として厳しい。
- サプライチェーンの課題:物流コストや生産リスクをいかに抑えるかが今後の焦点。
とはいえ、これらはグローバルメーカー共通の課題でもあります。
アシックスは生産拠点の分散やブランド戦略の多角化で、こうしたリスクへの耐性を高めている点が強みです。
今後の展望:アシックス株価の行方をどう見るか
アシックスの株価は、短期的な値動きよりも中長期の成長に注目する段階にあります。
ランニング・スポーツ需要とライフスタイル市場の両方を取り込む現在の戦略は、企業としての安定成長に直結しており、投資家にとっても魅力的なテーマです。
2025年の通期見通しでは、売上高8,000億円・純利益900億円を目標とし、いずれも上方修正を維持。
スポーツとファッションの両軸で成長できる数少ない日本企業として、アシックスの存在感は今後さらに高まっていくでしょう。
アシックス株価の動向を追いながら、長期視点で見極めを
「アシックス株価が上昇中?」という問いに対して、答えは“はい、業績に裏付けられた上昇”と言えるでしょう。
スポーツ需要の回復、ファッション市場の広がり、そして企業としての成長力。
これらが組み合わさることで、アシックスの株価は今後も堅調な推移を見せる可能性があります。
短期的な上げ下げに一喜一憂するよりも、ブランド価値と業績の両方を見極めながら、中長期的に成長を追うことがポイントです。
健康志向やサステナビリティなど、社会の潮流とも合致するアシックス。今後の株価動向を見守る価値は十分にあると言えるでしょう。


