スパイクを履いた瞬間から足に吸いつくような柔らかさを感じたことはありますか？
アシックスが新たに開発した「シルキーラップ（SILKYWRAP）」は、まさにそんな“素足感覚”を実現するために誕生した高機能アッパー素材です。この記事では、その特徴や開発背景、実際の履き心地までを分かりやすく解説します。
シルキーラップとはどんな素材？
シルキーラップは、アシックスがサッカースパイクのために独自開発した新素材。
正式には「SILKYWRAP」と呼ばれ、主に最新モデルの「DS LIGHT X-FLY PRO 3」で採用されています。
名前の通り、シルクのようにしなやかで、足を包み込む“ラップ（wrap）”構造をイメージした設計。
素材は高品質な人工皮革をベースに、柔軟性と耐久性を高次元で両立させた複合構造になっています。
従来の人工皮革では得られなかった、柔らかさ・軽さ・フィット感を同時に実現することで、試合初日から快適に履けるスパイクとして注目を集めています。
開発の背景：天然皮革と人工皮革の“いいとこ取り”
長年、サッカー用スパイクでは「天然皮革」と「人工皮革」が対立軸にありました。
天然皮革は足に吸いつくような柔らかさと馴染みの良さが魅力ですが、雨や湿気に弱く、形が崩れやすいという弱点がありました。
一方で人工皮革は軽くて丈夫な反面、足当たりが硬く、馴染むまでに時間がかかることが多かったのです。
アシックスはこの“トレードオフ”を解消するため、何年にもわたる素材研究を経て、両者の長所を融合させた新素材を開発。
それがシルキーラップです。
この素材は、天然皮革のような柔らかさを持ちながらも、人工皮革の耐久性や形状保持性を備えており、プロ選手からアマチュア層まで幅広く対応できるよう設計されています。
シルキーラップがもたらす3つのメリット
1. 履いた瞬間から柔らかくフィットする
新品でも硬さを感じにくく、足を包み込むような感触が特徴。
一般的なスパイクは“履き慣らし期間”が必要ですが、シルキーラップは最初から足に馴染むため、試合用としてすぐに使えると好評です。
「素足でボールを触っているよう」と表現するプレーヤーも多く、ボールコントロールやトラップ時の繊細な感覚を損ないません。
2. 軽量でありながら安定感を維持
DS LIGHT X-FLY PRO 3 の場合、片足26.5cmで約195g。
これはプロレベルのスプリントスパイクに匹敵する軽さです。
軽量でありながら、素材が伸びすぎず、長時間のプレーでもフィット感が安定。
特にスピードプレーや俊敏な動きを重視する選手にとって理想的なバランスです。
3. 耐久性・保形性の高さ
人工皮革ベースの構造により、雨や汗で濡れても形が崩れにくいのが大きな強み。
天然皮革のように乾燥後にゆるむ心配が少なく、長期間使ってもフィット感を維持できます。
また、伸びきった後でも“元の形に戻ろうとする力”が働くため、耐久性にも優れています。
履き心地と実戦での評価
実際に着用した選手や専門店スタッフのレビューでは、次のような声が多く寄せられています。
- 「足に吸い付くようなフィット感で、ドリブル時のボールタッチが自然」
- 「急なターンや切り返しでも違和感がない」
- 「軽いのにホールド感がある」
- 「長時間プレーしてもフィット感が変わらない」
特に、後半でも足元の安定感を保てる点は多くのプレーヤーが評価しています。
シルキーラップは単なる“柔らかい素材”ではなく、“疲労してもずれにくい”構造的安定性を持っている点がポイントです。
足の形に合わせて自然に馴染む柔軟性
もうひとつの特徴は、足型への対応力。
柔軟で伸縮性のある素材のため、細身・幅広・甲高など、さまざまな足形に合わせて自然にフィットします。
これにより、「前足部がきつい」「横幅が余る」など、従来のスパイクでありがちだった不快感を軽減。
スパイクに求められる「軽い・速い・痛くない」という要素をバランスよく両立させています。
特に成長期の学生プレーヤーや、週末プレーヤーにとっても扱いやすく、履き替え直後から快適に使える点は大きな魅力です。
雨の日にも頼れる耐水性と安定感
天然皮革は水分を含むと伸びたり重くなったりしますが、シルキーラップはその心配がありません。
雨の中でも形状を維持し、濡れても重くならない。
また乾燥後に硬化しにくいため、メンテナンスも簡単です。
このため、全天候型の人工芝グラウンドや雨天練習など、あらゆる環境に対応できる万能素材として支持を集めています。
天然皮革との違いと注意点
シルキーラップは高機能な人工皮革ですが、あくまで「天然皮革と同じ質感を完全に再現するもの」ではありません。
本革特有の経年変化や、履き込むほどに“自分の足に成長していく”感覚を重視する人には、やや物足りなく感じるかもしれません。
一方で、日々の練習や試合で酷使しても形が崩れにくく、手入れの手間が少ないのは大きな利点。
つまり、性能と実用性を重視するプレーヤーにとって理想的な選択肢と言えます。
シルキーラップを採用した代表モデル
現在、シルキーラップが採用されている代表的なスパイクは「DS LIGHT X-FLY PRO 3」。
他にも、一部の上位モデルで同系統の素材が使われていますが、名称として正式に明記されているのはこのモデルが中心です。
X-FLYシリーズは軽量性とフィット感に優れたアシックスの人気ラインで、スピードとテクニックを両立させたいプレーヤーに向けて設計されています。
特にウイングやサイドアタッカーなど、瞬発的な加速を求めるポジションに最適です。
どんなプレーヤーに向いているか
シルキーラップ素材のスパイクは、以下のようなプレースタイルの人におすすめです。
- 素足感覚でボールタッチをしたいテクニック系プレーヤー
- スピードや加速を武器にするウイング・サイドバック系の選手
- 1日中履いても疲れにくい軽量スパイクを求める人
- 雨天でも安定したフィット感を維持したい人
- 天然皮革のメンテナンスが面倒に感じる人
これらの要素を重視するプレーヤーにとって、シルキーラップは“次世代の標準素材”と言っていい存在です。
今後の展開とアシックスの狙い
アシックスは「素材進化によるプレーの最適化」をテーマに、ラスト設計やソール構造と連動させたスパイク開発を続けています。
シルキーラップはその中心的な技術として、今後は他のスパイクやトレーニングシューズ、さらにはフットサル用モデルへの展開も期待されています。
サッカーだけでなく、軽量性やフィット感を求める多くの競技シューズにおいても応用可能な素材であり、アシックスの「機能美」哲学を象徴する存在といえるでしょう。
まとめ：アシックスのシルキーラップがもたらす新時代の履き心地
アシックスのシルキーラップは、従来の「天然皮革 vs 人工皮革」という対立を超えた新世代素材です。
柔らかく、軽く、そして強い。
雨の日でも形が崩れず、履いた瞬間から高いフィット感を発揮する――そんな万能アッパーは、現代サッカーのスピードとテクニックを支える理想的な存在です。
素材の進化がプレーを変える時代。
「アシックス シルキーラップ」は、まさにその象徴と言えるでしょう。
