アシックスのCMって、どこか心に残るものが多いですよね。単にシューズやウェアを宣伝するだけでなく、「動くこと」や「挑戦すること」をテーマにしたメッセージ性の強い内容が多く、ブランド全体の印象を形づくってきました。ここでは、これまでの代表的なアシックスCMを振り返りながら、どんな想いが込められているのか、出演者や背景を含めて紹介します。
アシックスのCMが伝えたいものとは？
アシックスのCMを見ていると、共通して流れているメッセージがあります。それは「スポーツを通じて、健やかで前向きな人生を」という理念。ブランド名の由来である「Anima Sana in Corpore Sano（健全なる身体に健全なる精神を）」は、そのまま広告のテーマとして受け継がれています。
昔からアスリートに寄り添うブランドとして知られるアシックスですが、近年は“誰もが動くことで前向きになれる”という包み込むようなメッセージを発信。アスリートだけでなく、日常の中で何かに挑戦する人たちにも寄り添う姿勢が見て取れます。
「RUN for X」シリーズ――動く意味を問いかけるCM
アシックスの代表的なブランドCMといえば、2020年にスタートした「RUN for X」シリーズ。このキャンペーンは、ひとりひとりが走る理由（＝X）を持ち、それを追いかける姿を描いています。
出演したのは、桐生祥秀（陸上）、リーチ・マイケル（ラグビー）、山本篤（パラ陸上）、前田穂南（マラソン）といったトップアスリートたち。そして、ミュージシャンのTaka（ONE OK ROCK）や渡辺直美といった文化・エンタメ分野の著名人も登場しました。
このシリーズの魅力は、競技の枠を超え、「動くこと」そのものの意味を問いかけている点。走る理由は勝つためだけではない。誰かのため、自分のため、明日を生きるため――それぞれの“X”を尊重するという考え方が、多くの共感を呼びました。
オリンピックイヤーの特別編「To All Athletes」篇
2021年には、東京オリンピック・パラリンピックに合わせて特別編「RUN for X To All Athletes」篇が放映されました。夢の舞台に立つ選手たちの姿を通じて、「努力」「挑戦」「感謝」をテーマに構成された映像です。
石川佳純（卓球）やノバク・ジョコビッチ（テニス）など、世界中のアスリートが登場。競技を超えてひとつのメッセージを共有する構成が印象的でした。「ASICSは、すべてのアスリートを支えるブランドである」というメッセージが視聴者の心に残った作品です。
このCMでは、アシックスが持つ“グローバルブランド”としての側面も強調されました。国内外の選手を同時にフィーチャーすることで、世界中のアスリートと共に歩む姿勢を明確に打ち出しています。
「こんなもんじゃない。」METASPEEDシリーズCMの熱量
競技者向けランニングシューズ「METASPEED」シリーズのCM「こんなもんじゃない。」篇（2023年）は、ストレートな言葉と映像が印象的でした。
「限界を決めるのはいつも自分」「証明しよう。まだできる、もっといける」――力強いナレーションが走る映像とともに流れ、アスリートの“内なる闘志”を描きます。
このCMは、単なる商品訴求ではなく、“ランナーの心”に焦点を当てている点が特徴です。走ることは自己表現であり、自分との対話。そんなメッセージをブランドとして代弁することで、アシックスの哲学がより一層明確になりました。
ランニングブームが続くなかで、アシックスは「道具ではなく、伴走者としてのブランド」であることを示しています。
懐かしのアシックスCM――原点は「本気なら、アシックス。」
近年の感動的な映像に対して、1990年代以前のアシックスCMはもっと直球でした。
「本気なら、アシックス。」というキャッチコピーを覚えている方も多いでしょう。有森裕子や城彰二ら、当時のトップアスリートを起用したこのシリーズは、「本気の勝負を支える道具」というブランドの原点を伝えていました。
また、「アシックス スーパーランドセル」や「killyDAP」など、靴以外の商品を扱ったユニークなCMも存在。いずれも「丈夫さ」「信頼性」「日本ブランドとしての誠実さ」を前面に押し出しており、今見てもアシックスらしい真面目さがにじみ出ています。
昔のCMは、スポーツメーカーとしての信頼を築く基礎。その上に今の“ストーリー性のある広告”が存在しているのです。
出演者が象徴するブランドの多面性
アシックスは、アスリートだけでなく文化人や一般層を起用することで、“すべての動く人”を応援するメッセージを広げてきました。
たとえばTakaのような音楽アーティストを起用したことで、若者やカルチャー層にも訴求。渡辺直美のように“誰でも挑戦できる”象徴的な存在を取り入れることで、スポーツ経験の有無に関わらず、多くの人に共感を与えています。
このような多様な起用は、アシックスが「スポーツブランド」ではなく「ライフスタイルブランド」へ進化している証拠でもあります。走る・動く・挑戦するという行為を、誰もが共有できる価値にまで広げているのです。
CMが作る“ブランドの物語”
アシックスのCMが他社と違うのは、製品を主役にせず“人”を主役にしていること。
靴やウェアはあくまで背景であり、描かれるのは「努力」「成長」「再挑戦」「希望」といった物語です。
この構成が、多くの視聴者に「自分ごと」として受け止められる理由。
「走る」という行為を人生の比喩として捉えることで、スポーツに馴染みのない層にも“前向きに生きる勇気”を届けています。
マーケティング的にも、こうしたストーリー性はブランドの“長期的価値”を高める戦略。アシックスが世代を超えて支持される背景には、機能性だけでなく、心に残るストーリーテリングがあります。
アシックスCMの変遷が示すブランド進化
時代ごとにアシックスのCMは大きく変わってきました。
- 1990年代以前：機能性重視。「耐久性」「信頼」「本気」を強調。
- 2000〜2010年代：競技シーン中心。トップアスリートのパフォーマンスを前面に。
- 2020年代以降：ストーリー重視。「挑戦」「共感」「多様性」をキーワードに、社会全体へメッセージを発信。
この変化は、アシックスが“靴を売る会社”から“生き方を提案するブランド”へと成長した過程そのものです。技術力と哲学を両輪に、時代に合った表現でブランド価値を更新してきた姿勢が伝わってきます。
昔のCMが今でも語り継がれる理由
アシックスの昔のCMをYouTubeで探すと、今でも多くの人が「懐かしい」とコメントしています。
それは単なる懐古ではなく、「あの頃の自分とブランドが重なっていた」記憶が蘇るからでしょう。
当時のCMは、学生や社会人にとっての“努力の象徴”。
それを思い出すことは、自分の青春や夢を思い出すことでもあります。アシックスが長年愛されてきた理由は、機能性だけでなく、こうした“心の記憶”を持つブランドだからだといえます。
これからのアシックスCMに期待したいこと
今後のアシックスは、デジタルやSNSを活用した新しい表現にも積極的です。
実際、「RUN for X」や「METASPEED」ではテレビだけでなく、YouTubeや屋外広告、SNSキャンペーンと連動して展開。より多くの人に“動く喜び”を伝えようとしています。
これからは、ジェンダーや年齢、障がいの有無を超えて「すべての人が動くことを楽しめる社会」を目指す広告が増えるでしょう。
アシックスが描く次のCMには、スポーツの枠を超えた「生きる力」そのものが表現されるはずです。
アシックスのCMまとめ！ブランドが描く未来の走り方
アシックスのCMは、時代ごとにテーマを変えながらも一貫して「人が動くことの美しさ」を伝えてきました。
本気で挑戦する姿を描いた90年代。多様な生き方を応援する現在。そして未来に向けては、誰もが“自分らしく走れる社会”を目指す。
ブランドの中心にあるのは、変わらぬ信念――「健全な身体に、健全な精神を」。
その理念が映像という形で継承されてきたからこそ、アシックスのCMは単なる広告を超え、見る人の心に残り続けるのです。
