アシックスという名前を聞くと、スポーツシューズやランニングウェアを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、その根底にある「企業理念」や「創業者の思い」までは意外と知られていません。この記事では、アシックスの企業理念を軸に、創業の背景やブランドの価値観、そして現代にも通じる哲学をわかりやすく紐解いていきます。
アシックスの原点は「健全な身体に健全な精神を」
アシックスの企業理念を語る上で欠かせないのが、ラテン語の格言「Anima Sana In Corpore Sano（健全な身体に健全な精神あれかし）」です。アシックスという社名は、この頭文字を組み合わせて生まれました。
創業者の鬼塚喜八郎は、第二次世界大戦後の混乱期に「スポーツを通じて青少年の心と体を健全に育て、社会に貢献したい」という強い信念を持っていました。1949年、神戸で「鬼塚商会」を創業し、バスケットボールシューズづくりからスタートしたのがアシックスの原点です。
「靴は人の健康を支える道具であり、正しい靴づくりが人の心まで健全にする」——この考えが、今もアシックスのすべての製品開発の中心にあります。
企業理念「ASICS SPIRIT」に込められた想い
アシックスの公式企業理念は「ASICS SPIRIT」と呼ばれています。これは単なるスローガンではなく、企業の哲学・使命・行動指針を体系化したものです。
フィロソフィー（創業哲学）
「健全な身体に健全な精神あれかし」
この言葉こそ、アシックスの存在理由です。スポーツを通して心と体の健康を支えるという創業者の願いは、70年以上経った今もアシックスの中心にあります。
理念（Purpose / Mission）
アシックスは、次の4つを企業理念として掲げています。
- スポーツを通して、すべてのお客様に価値ある製品・サービスを提供する。
- 環境を守り、世界の人々とその社会に貢献する。
- 健全な経営により得た利益を、株主・地域社会・従業員へ還元する。
- 個人の尊厳を尊重し、自由で公正な企業文化を実現する。
この理念には「人」「社会」「環境」を三位一体で支えるという、アシックスらしいバランス感覚が表れています。
ビジョン（長期的な目標）
アシックスのビジョンは
「CREATE QUALITY LIFESTYLE THROUGH INTELLIGENT SPORT TECHNOLOGY」
（スポーツで培った知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する）というものです。
単にスポーツ用品を作るだけでなく、「スポーツを通してより良い生き方をデザインする企業」でありたい——そんな未来像を描いています。
バリュー（行動規範）
アシックスは「スポーツマン精神6か条」を社員の行動基準にしています。
- ルールを守る
- フェアプレーを徹底する
- 常にベストを尽くす
- チームの勝利のために闘う
- 努力を惜しまない
- 転んでも起き上がる
この“スポーツマン精神”は、社員だけでなく、アシックスを愛用するすべての人へのメッセージでもあります。
科学と人間性が融合したものづくり
アシックスの理念を体現しているのが、「人間中心の科学」に基づく製品開発です。
神戸には「アシックススポーツ工学研究所」があり、アスリートの動きや衝撃データを科学的に分析して、靴の形状や素材を設計しています。この研究の結果生まれた代表的な技術が、クッション性と反発力を両立させた「GELテクノロジー」などです。
創業当時から「人の身体を守る靴づくり」にこだわってきたアシックスは、最新の科学とデータを活用することで、より安全で快適なシューズを生み出し続けています。
サステナビリティと社会貢献の精神
アシックスの企業理念には「環境をまもり、世界の人々と社会に貢献する」という項目があります。この言葉の通り、アシックスは早くからサステナビリティを企業活動の中心に据えてきました。
近年では、製造過程でのCO₂排出削減や、再生素材の利用を進めています。たとえば、アッパー素材にリサイクルポリエステルを使用したシューズや、環境にやさしい染色技術を採用したウェアなど、地球環境とスポーツを両立させる取り組みが広がっています。
また、アシックスは国際的なスポーツイベントや学校教育を通して、青少年の健全育成を支援するプログラムも展開。創業者の志である「スポーツによる社会貢献」を現代の形で実践しています。
ブランドの根幹にある「人へのまなざし」
アシックスのブランド哲学には、一貫して「人へのまなざし」があります。
単なる製品開発や企業成長ではなく、「人がスポーツを通してより幸せに生きること」を支援する。だからこそアシックスは、トップアスリートだけでなく、ランニングを楽しむ一般ユーザーや、健康維持を目的としたシニア層まで、幅広い層の生活に寄り添う製品を提供しています。
その姿勢は、どんなに技術が進歩しても変わりません。アシックスが重視するのは、「靴が人を変える」という確信。靴を通して人の心と行動を変え、前向きな生き方を後押しすることこそ、アシックスの使命なのです。
現代社会で再評価されるアシックスの理念
現代はストレスや不安が多い時代。そんな今だからこそ、アシックスの「健全な身体に健全な精神を」という企業理念は、より一層の意味を持っています。
身体を動かすことが心の健康にもつながる——この当たり前のようでいて大切な価値を、アシックスは創業以来ずっと伝え続けてきました。
また、環境保護やサステナビリティへの取り組みは、「スポーツができる地球を守る」という新たな使命にもつながっています。
つまりアシックスの企業理念は、過去の遺産ではなく、今を生きる私たちに向けたメッセージでもあるのです。
アシックスの企業理念が示す未来
アシックスはこれからも、「スポーツを通して人々のライフスタイルをより豊かにする」という理念のもと、テクノロジーと人間性を融合させたものづくりを続けていくでしょう。
靴を履くすべての人が、自分らしく健康的に生きられるように。
その願いが、70年以上変わらずアシックスの根幹を支えています。
アシックスの企業理念は、「スポーツを通じて社会に貢献する」という創業者の思いを受け継ぎながら、時代とともに進化してきました。健全な身体と精神の調和を重んじ、人と地球の未来を見据えるアシックス。その理念こそが、今も世界中の人々から愛されるブランドであり続ける理由なのです。
