サッカー好きなら一度は耳にしたことがある、アシックスの「ウルトレッツァ」。プロ選手の間でも人気が高く、特にテクニカルなプレーを支えるスパイクとして知られています。この記事では、ウルトレッツァの特徴や開発背景、どんなプレーヤーに向いているのかを、実際のユーザー評価や開発ストーリーを交えながら紹介していきます。
ウルトレッツァとは?アシックスが誇る“テクニシャン向け”スパイク
アシックスのウルトレッツァは、単なる軽量スパイクではなく、“繊細なボールタッチ”と“俊敏なターン性能”を重視したシリーズです。開発には、かつてヴィッセル神戸でプレーしたアンドレス・イニエスタが関わっており、彼の理想を形にしたともいえるモデルとして誕生しました。
イニエスタは「プレー中、足とスパイクの一体感を失いたくない」と語ったといわれています。その言葉どおり、ウルトレッツァは足を包み込むようなフィット性と、柔軟で自然な動きを実現する構造を採用しています。ターン時の安定性、瞬時の切り返し、そしてボールをコントロールする感覚を最大化するために、細部まで作り込まれたスパイクです。
軽量性と安定性の両立――アシックスが追求した機能美
ウルトレッツァシリーズの大きな特徴は、「軽さ」と「安定性」の絶妙なバランスにあります。軽量化を極めると剛性が犠牲になり、安定性を高めると重くなってしまう。アシックスはこのトレードオフを解消するため、独自の素材構成と構造設計を取り入れました。
前足部には、カンガルーレザーを使用。柔らかくしなやかな素材で足に吸い付くような感覚を生み出します。ステッチの配置も計算されており、横方向の伸びを抑制。これによりターン時のねじれやズレを防ぎ、正確なボールタッチをサポートします。
さらにソール部分には、回旋動作を支える「ダブルトライアングルスタッド」や「トルクトラス構造」を採用。天然芝や人工芝、土のグラウンドでも高いグリップ力を発揮し、足の力を逃がさない仕様になっています。
「5mmヒールグラディエント」がもたらす前傾姿勢と俊敏な動き
ウルトレッツァシリーズを語るうえで欠かせないのが、「ヒールグラディエント」構造。これは踵部分を5mm高く設計することで、自然と重心を前方に誘導するアシックス独自の技術です。
この構造により、スタートダッシュや方向転換の反応速度が上がり、攻守の切り替えがスムーズに。中盤での細かいステップや、ドリブルで相手を抜き去る際の一瞬の動作が、より俊敏に行えるようになります。
また、足首周りには起毛調メッシュ素材を採用し、ホールド感を高めています。長時間のプレーでもブレが少なく、足とスパイクの一体感が持続するのも嬉しいポイントです。
イニエスタとの共同開発が生んだ“AIモデル”の哲学
「ウルトレッツァ 2 AI」というモデルは、アシックスとイニエスタの共同開発によって生まれた特別な一足です。AIの名前はもちろん「アンドレス・イニエスタ」の頭文字。彼のプレースタイルそのものが反映されています。
イニエスタは、プレッシャーの中でも正確なボールコントロールを求め、スパイクに対しても「どんな状況でも足裏感覚を失わないこと」を条件に挙げていました。その要求に応えるため、アシックスは軽量化とフィット性、そしてトラクション性能を徹底的に追求。結果、ウルトレッツァ 2 AIは、プロ選手からも「履いた瞬間に違いがわかる」と評されるスパイクとなりました。
彼のように、狭いスペースでもボールを収め、次のプレーへ繋げたいタイプのプレーヤーには、まさに理想的な設計です。
ウルトレッツァ3へ――より洗練された進化形
最新モデルの「ウルトレッツァ3」では、アシックスのテクノロジーがさらに進化しています。軽量化はもちろん、アッパーには「モーションラップ構造」を採用。足の動きに合わせて素材がしなやかに変形し、まるで素足でボールを扱っているような自然な感覚を生み出します。
また、ヒールカウンターの形状を見直すことで、踵の安定感が向上。試合後半や延長戦でも、プレー精度を落とさない持続力が確保されています。
このウルトレッツァ3は、プロ仕様の要素を保ちながらも、アマチュアや学生プレーヤーにも使いやすいように設計されており、コストパフォーマンスにも優れています。
ウルトレッツァが合うプレーヤーとは?
ウルトレッツァが真価を発揮するのは、ボールタッチや方向転換を多用するテクニカル系プレーヤーです。具体的には、以下のようなタイプに最適です。
- 中盤で細かいパスワークを展開する司令塔タイプ
- 狭いスペースでのドリブル突破を得意とする選手
- ターンやフェイントで相手をかわす技術派フォワード
- ゲームメイクやリズムを支配するプレーヤー
一方で、パワー系や直線的なスピードを重視するタイプには、他シリーズの方がフィットする場合もあります。ウルトレッツァは“技術を活かすスパイク”であり、“力で押すタイプ”にはやや柔らかく感じることもあるでしょう。
ジュニア・クラブモデルも充実、幅広い層に対応
ウルトレッツァは、トップモデルだけでなく、ジュニア向けやクラブモデルも展開されています。
「ウルトレッツァ3 クラブ」では、人工皮革を使って耐久性を高め、価格も抑えられています。練習用や部活用としても人気があり、軽さと扱いやすさを両立。
さらに「ウルトレッツァ3 ジュニア GS」は、子どもの成長期の足に配慮し、柔軟なソールと標準的な足囲で快適なフィット感を実現しています。
つまり、ウルトレッツァは年齢やレベルを問わず、「テクニックを磨きたいプレーヤー」全員に寄り添うシリーズなのです。
ウルトレッツァがプロに選ばれる理由
プロ選手がスパイクに求めるのは、ブランドや見た目ではなく「プレーを邪魔しないこと」。その点で、ウルトレッツァはアシックスならではの研究力が光ります。
長年にわたるスポーツバイオメカニクス研究から導き出された設計は、プレーヤーの動作を解析し、最も自然に動ける形状を追求しています。
特にイニエスタのような精密なプレーをする選手にとって、足とスパイクのズレは致命的。ウルトレッツァはそのわずかな違和感すら排除し、“素足感覚”を極める方向へ進化してきました。
この「履いていることを忘れるような一体感」が、プロに選ばれ続ける理由のひとつです。
注意点と選び方のポイント
ウルトレッツァは高機能なスパイクである反面、万能ではありません。
まず、柔らかいカンガルーレザーは繊細なため、使用後は汚れを拭き取り、陰干しでしっかり乾燥させるなどのケアが必要です。
また、サイズ選びにも注意。足幅が広い方は、ワンサイズ上げるか、試着してフィット感を確認するのがおすすめです。
そして、練習用と試合用を分けて使用することで、スパイクの寿命を延ばしやすくなります。アシックスはクラブモデルなども揃えているため、状況に応じて複数使い分けるのが理想です。
現代サッカーにおける「ウルトレッツァ」の価値
今のサッカーでは、単なるスピードよりも、素早い判断と正確なボールコントロールが求められます。ウルトレッツァは、まさにこの現代的なプレースタイルに適応したスパイク。
軽さだけでなく、動き出しの速さ、切り返しの鋭さ、そしてタッチの精度を支えるよう設計されています。
「テクニックを最大限に発揮したい」「足とボールが自然につながる感覚を求めたい」――そんなプレーヤーにとって、ウルトレッツァは単なる用具ではなく、“武器”になり得る存在です。
アシックス ウルトレッツァが愛され続ける理由
アシックスのウルトレッツァは、フィット感、俊敏性、ボールタッチの繊細さを極めたスパイクとして、今も多くのプレーヤーに支持されています。
イニエスタとの共同開発という物語、アシックスが誇る科学的アプローチ、そしてプレーヤーの感覚に寄り添う設計――そのすべてが融合した一足です。
“速く走るため”のスパイクではなく、“正確に操るため”のスパイク。
それが、アシックス ウルトレッツァが多くの選手に愛され続ける理由なのです。


