アシックスの中でも「オールジャパンモデル」という言葉には、どこか特別な響きがありますよね。
ただ「オールジャパン」とは一体何を指すのか、正式なシリーズ名なのか、それとも通称なのか――。この記事では、アシックスの“オールジャパンモデル”をテーマに、その成り立ち・特徴・人気の理由、そして代表選手との関わりまでをじっくり解説します。
オールジャパンモデルとは?アシックスの中で特別な存在
「オールジャパン(ALL JAPAN)」という名前は、実はアシックスの公式シリーズ名として厳密に定義されているわけではありません。
多くの場合、国内向けの限定モデルや、日本の競技シーンに合わせて作られたモデルを指す“通称”として使われています。
かつてアシックスは、部活・実業団・国内大会など日本独自の競技環境に最適化されたシューズを数多く作ってきました。
その中で、海外展開を前提としない「日本仕様」のモデルが存在し、それらが“オールジャパン”と呼ばれるようになったのです。
つまり、オールジャパンモデルとは――
日本人の体型や動き、日本の競技文化に合わせて作られた、国内流通限定または日本製の特別ライン。
公式なシリーズ名ではなく、“アシックスの日本的価値観を象徴するモデル群”と言えます。
アシックスが「日本仕様」にこだわる理由
アシックスは1949年に神戸で誕生した日本ブランド。
創業者・鬼塚喜八郎の「健全な身体に健全な精神が宿る」という理念から始まり、70年以上にわたり日本のスポーツ文化とともに歩んできました。
その中で築かれたのが、「日本人の足型」や「部活文化」への深い理解。
海外ブランドにはない“ジャパンスペック”の靴づくりが、アシックスの強みとなっています。
日本の気候やコート環境、練習量に合わせた素材選びや耐久性設計――。
これらの工夫が詰まったモデルは、国内の選手たちに高く評価され、自然と“オールジャパン”の名が定着していきました。
名作として語り継がれる「オールジャパン」系モデルたち
オールジャパンモデルと呼ばれる代表的なシューズは、いくつかのジャンルに分かれています。
ここではファンの間で特に人気が高い系統を紹介します。
● バスケットボール系:FABRE JAPAN S から JAPAN PRO へ
アシックスのバスケットシューズの原点ともいえる「FABRE JAPAN S」は、1981年に誕生したクラシックモデル。
そのDNAを受け継いで登場したのが「JAPAN PRO」です。
素材の質感や履き心地を現代仕様にアップデートしながら、往年のフォルムを残したデザインが特徴です。
この“JAPAN”の系譜こそ、オールジャパン精神の象徴。
国内バスケット界では、練習用・大会用として長年愛用されてきた伝統的ラインです。
● ライフスタイル系:ASICS JAPAN COLLECTION
2019年以降、アシックスは「ASICS JAPAN COLLECTION」として新たな路線を開きました。
これは“競技モデル”ではなく、日本のクラフトマンシップを活かした高品質スニーカーラインです。
天然皮革を日本国内でなめし、細部まで丁寧に仕上げたレザーシューズ。
たとえば「GEL-PTG」「GEL-KYRIOS」など、人気ランニングモデルをベースにした日本限定仕様も展開されました。
機能性だけでなく「素材の美しさ」「履き込む楽しさ」を重視するこのコレクションは、まさに現代の“オールジャパン”の進化形です。
● 部活・実業団モデル:国内流通限定のクラシック系
2000年代初期まで販売されていた「ALL JAPAN SL-L」など、学校・実業団向けのトレーニングシューズも根強い人気があります。
現在では生産終了しているモデルも多く、中古市場では“幻の名作”として高値で取引されることも。
これらのモデルは、部活動での使用を想定した丈夫な作りが特徴で、当時の学生アスリートたちが「履き潰すほど使った」と語るほど。
オールジャパンの名は、そんな実用の現場から自然に広まっていきました。
日本限定だからこそ価値がある。オールジャパンが希少視される理由
オールジャパンモデルが「限定」や「希少」と言われるのには、明確な理由があります。
- 国内市場のみの販売
- 直営店や限られたセレクトショップでしか扱われず、海外展開がない。
そのため海外ファンから“幻のアシックス”として注目されることもあります。
- 直営店や限られたセレクトショップでしか扱われず、海外展開がない。
- 生産量が少ない
- 日本製素材や国内生産を前提とするため、量産が難しい。
結果として、リリース後すぐ完売・再販なしというケースも珍しくありません。
- 日本製素材や国内生産を前提とするため、量産が難しい。
- 職人技が光る高品質仕上げ
- 靴の縫製、レザーの加工、ソールの接着など、細部に手間をかけているため、同価格帯の海外モデルよりも完成度が高い。
“Made in Japan”の信頼感が購買動機になっています。
- 靴の縫製、レザーの加工、ソールの接着など、細部に手間をかけているため、同価格帯の海外モデルよりも完成度が高い。
- 情報が少ない
- 公式が詳細を出さないことも多く、コアなファンが口コミやSNSで情報を共有。
「知る人ぞ知る存在」であることが、さらにコレクター心をくすぐるのです。
- 公式が詳細を出さないことも多く、コアなファンが口コミやSNSで情報を共有。
代表選手は履いている?“愛用”の真実と背景
タイトルにもある「代表選手も愛用」という表現については、少し補足が必要です。
実際のところ、現在の日本代表やオリンピック選手が公式に“オールジャパンモデル”を使用している事例は確認しづらいのが現実です。
多くのトップ選手は競技専用に設計された最新モデル(例:「METASPEEDシリーズ」「DS LIGHTシリーズ」など)を使用しています。
しかし、過去の実業団や学生競技では、オールジャパン系シューズが標準的に使われていました。
たとえば、全国大会のチームユニフォームや強豪校で支給されていたシューズに「ALL JAPAN」表記が入っていた時代もあります。
つまり「代表クラスの選手が育った環境には、常にオールジャパンモデルがあった」と言えるのです。
現在でも、元代表選手が私服やトレーニングでJAPAN COLLECTIONを愛用している例は多く、
“競技でも街でも履けるアシックスの特別ライン”としての地位は確立しています。
デザインと機能に宿る“日本らしさ”
オールジャパンモデルが他のシリーズと一線を画す最大の理由は、「日本らしい靴づくり」そのものにあります。
- 素材選びのこだわり
上質な日本製レザーや、伝統的な染色技法(墨染めなど)を採用。
経年変化を楽しめるように設計されている。 - 足型と履き心地
日本人の甲の高さ・幅広傾向に合わせたラスト(木型)設計。
フィット感と安定感の両立が徹底されています。 - ミニマルで上品なデザイン
派手さよりも質感を重視。ホワイト、ネイビー、アイボリーなど落ち着いた色が多く、
スポーツにも街履きにもなじみます。 - アシックスらしい機能性
GELクッション、FlyteFoam、安定プレートなど、競技用技術を流用。
デザイン性と実用性を両立しています。
こうした“和のミニマリズム”と“スポーツテクノロジー”の融合が、他ブランドにはないアシックスの独自性。
それこそが「オールジャパン」という名前にふさわしい理由です。
ファンやコレクターに愛され続ける理由
オールジャパンモデルは、単なる靴以上の意味を持っています。
- 昔履いていた懐かしさ
- 日本製という誇り
- 手に入りにくい限定感
- 時代を超えても変わらない履き心地
これらの要素が重なり、今でもコレクターズアイテムとして高い人気を維持しています。
メルカリや中古ショップでは、状態の良いオールジャパンモデルが高値で取引されることも。
また、最新のJAPAN COLLECTIONを通して「昔の部活モデルが蘇った」と感じるファンも増えています。
つまりオールジャパンは、“スポーツの記憶と日本の技術の融合”を体現した存在なのです。
現代の「オールジャパン」――再評価の波
ここ数年、国内スニーカーファンの間で再び注目が集まっている理由は明確です。
- “国産回帰”のトレンド
日本製品への信頼と、クラフトマンシップ志向の高まり。
アシックスはその象徴的ブランドとして再評価されています。 - “大量生産より少量高品質”への価値転換
手に入りにくいものほど価値を持つ時代。
限定ラインを求める動きがスニーカーカルチャー全体で進んでいます。 - “アーカイブブーム”の追い風
80〜90年代モデルの復刻人気が続く中、FABRE JAPAN S のようなクラシックが再脚光を浴びている。 - ファッションとの融合
モードブランドとのコラボや、和素材を使ったスニーカーが登場し、
“日本のものづくり”を世界に発信する流れが広がっています。
つまり、オールジャパンモデルは「過去の名作」ではなく、今なお進化する“日本のアシックス文化”の象徴なのです。
アシックスのオールジャパンモデルは、今も特別な存在
アシックスのオールジャパンモデルとは、
単なる限定シューズではなく、“日本のスポーツ文化と職人技”が融合した一つの精神的シンボルです。
かつては部活や実業団で履かれ、今は高品質スニーカーとして蘇る――。
その背景には、アシックスが70年以上守り続けてきた「日本の足に合う靴づくり」があります。
もしあなたがスニーカー選びで“人とかぶらない一足”や“長く履ける上質な靴”を探しているなら、
アシックスのオールジャパンモデルはまさに理想的な選択肢になるでしょう。
その一足には、過去と未来、スポーツと文化、そして“日本”が詰まっています。


