「ニューバランスって、スニーカーにしては高くない？」
そんな疑問を持ったことがある人は多いはずです。
1万円台どころか、2万円、3万円を超えるモデルも珍しくない。けれど不思議なことに、その価格にもかかわらずファンが絶えないのがニューバランスの特徴です。
今回は、なぜニューバランスは高いのか。その理由を「品質」「製造背景」「履き心地」「ブランド戦略」の観点から、わかりやすく紐解いていきます。
ニューバランスが高い理由は“作られ方”にある
まず最初に知っておきたいのが、ニューバランスのスニーカーがどこで、どう作られているかという点です。
実はニューバランスは製造国によって価格が大きく変わります。主に3つの生産地が存在します。
- アメリカ（MADE IN U.S.A）
- イギリス（MADE IN U.K）
- アジア諸国（中国、ベトナム、インドネシアなど）
この中でも特に高価なのがアメリカとイギリスで作られたモデルです。これらは“プレミアムライン”と呼ばれ、職人の手作業を多く含み、高品質な素材を使用しています。
アジア製モデルは機械化された生産が中心で、価格も抑えめ。対してアメリカやイギリス製は、工程の一部を手で行い、製品ごとに細かい品質チェックを実施。まさに“靴職人の仕事”に近い作り方をしているのです。
その分、コストも当然上がります。だからこそ「ニューバランスは高い」と言われるのです。
価格を支える素材のこだわり
ニューバランスの上位モデルを手に取ると、まず感じるのが素材の良さです。
アジア製の一般モデルではメッシュや合成皮革を使うことが多いのに対し、USA／UK製モデルでは本革（スウェード、ヌバック、ピッグスキンなど）を惜しみなく使用しています。
特に有名なのが、米国ホーウィン社製の上質なレザー。これは高級革靴ブランドも採用する素材で、使い込むほどに味わいが増すのが特徴です。
こうした素材を組み合わせ、表面処理や縫製も一つひとつ丁寧に行うことで、まるで“革靴のようなスニーカー”が完成します。
また、ソール部分にはニューバランス独自のクッション技術が投入されています。代表的なものが「ENCAP」や「ABZORB」と呼ばれる構造。これは衝撃吸収性と安定性を両立させるための仕組みで、長時間履いても疲れにくいのが特徴です。
つまり、素材も構造も“快適さと耐久性”のために選ばれており、その分価格に反映されているというわけです。
職人の手が生む、クラフトマンシップの価値
ニューバランスの高級モデルは、単に高価な素材を使っているだけではありません。
実際には、製造工程にも大きな違いがあります。
アメリカやイギリスの工場では、職人たちが一足ずつ手で工程を進める部分が多く、品質チェックも何重にも行われます。
例えば、ステッチの幅が0.1mmでもずれていれば弾かれるほどの厳しい検査体制。これが「メイド・イン・USA」「メイド・イン・UK」の信頼を支えています。
また、ニューバランスは創業以来「矯正靴」づくりのノウハウを持つブランドとして知られています。もともと足の健康を第一に考えて設計されているため、単なる見た目重視のスニーカーとは根本が異なります。
この“人間工学的な履き心地”こそが、ニューバランスが長く支持される理由であり、価格を正当化する最大の根拠なのです。
“高いけれど納得”の履き心地
実際にニューバランスの上位モデルを履くと、多くの人が驚くのが履き心地の違いです。
足裏が包み込まれるようなフィット感、歩くたびに自然に前へ進むような推進力。これはソール構造とアッパー設計が絶妙に組み合わさっているからこそ生まれます。
特に990シリーズや1300シリーズは「一度履くと他に戻れない」とまで言われる名作。
ミッドソールには高反発素材と安定構造を兼ね備え、歩行時の衝撃をしっかり吸収してくれます。
さらに、ニューバランスは他ブランドに比べて「ワイズ（幅）」展開が非常に多く、自分の足に合ったサイズを選びやすいことも大きな魅力です。
これらの要素が組み合わさることで、「ただ高いスニーカー」ではなく「価格に見合う快適さ」を実現しているのです。
ブランド戦略と“所有する喜び”
ニューバランスは単なるスニーカーブランドではなく、ライフスタイルブランドとしての地位を確立しています。
「MADE IN USA」や「MADE IN UK」モデルは数量限定や復刻版として展開されることも多く、その希少性がファン心理を刺激します。
また、ニューバランスはブランドとしての“信頼”を積み上げてきました。
スポーツだけでなく、ファッション、ビジネス、カジュアルの全てにマッチするデザインは、他社にはない汎用性を持っています。
所有することで得られる満足感、履くたびに感じる安心感──それらがブランド価値をさらに高め、価格の高さにも納得感を与えています。
特にUSA製やUK製の上位モデルは、“工業製品”というよりも“作品”に近い存在。履くことでその背景や文化まで楽しめる点が、多くのファンを惹きつけています。
“高い＝価値がある”とは限らないが…
ここまで読むと、「じゃあ高いモデルが絶対に良いの？」と思う人もいるかもしれません。
実際のところ、必ずしもそうではありません。ニューバランスのアジア製モデルでも、日常使いには十分な品質を備えています。
たとえば「CM996」などは価格を抑えつつも、軽さとデザイン性を両立。街履きや通勤、旅行などには最適です。
一方で「M996」「M990」などの上位モデルは、耐久性や快適性を追求した構造で、長く愛用したい人に向いています。
つまり、「どのモデルが良いか」は使う目的と価値観によって変わるということ。
高価なモデルを選ぶのも、手頃なモデルを選ぶのも正解です。大切なのは、自分がどんな履き心地を求めているかを知ることです。
ニューバランスは“高い”だけのブランドではない
ニューバランスが高い理由は、単にブランドイメージやマーケティングだけではありません。
その背景には、素材、製造、技術、職人の手仕事、そして履き心地へのこだわりが詰まっています。
「高いけど、確かに違う」
それがニューバランスというブランドの本質です。
アメリカやイギリスの工場で丁寧に作られる一足には、長く履いても型崩れしない構造と、履くほどに馴染む快適さが宿ります。
結果として、数年単位で使える耐久性があり、修理も可能なモデルも存在します。長く使えるという点で考えれば、実は“高コスパ”と言えるのです。
まとめ：なぜニューバランスは高いのか
最後に改めてまとめましょう。
ニューバランスが高い理由は次のように整理できます。
- アメリカ・イギリスでの手作業生産による高コスト構造
- 高品質な天然素材や独自技術の使用
- 卓越した履き心地と安定性
- ブランドの信頼性とクラフトマンシップ
- 限定モデルや復刻版による希少価値
つまり、価格にはすべて理由があるということです。
単に“高級だから”ではなく、“高品質であるために高い”。そのバランスを理解すれば、ニューバランスのスニーカーはより魅力的に映るでしょう。
そして、自分の足とライフスタイルに合った一足を見つけたとき、その価格に込められた価値を実感できるはずです。
ニューバランスのスニーカーは、高いからこそ語れる物語を持っています。
それは、履くたびに感じる安心感と、時間が経つほどに深まる愛着。
だからこそ、多くの人が今日もまた“高いけれどニューバランス”を選び続けているのです。
